岡本綺堂の「玉藻の前」を読んで。

岡本綺堂の玉藻の前を読みました。
玉藻の前はかの有名な九尾の狐という妖怪のお話です。

有名なところでは中国・殷王朝の毒婦・妲己が九尾の狐ということになっていたり、日本では那須塩原にある殺生石がなれの果て、ということになっています。

古今東西、様々な形で物語化されているこの九尾の狐。巨匠・岡本綺堂氏ではどのように語られているのか、とても興味がありました。

時は平安時代、貧しい烏帽子折りの少年千枝松とその幼馴染の少女が主人公です。

幼馴染の少女・藻(みくず)が狐に魅入られ、体を乗っ取られ、時の権力者にその美貌と知恵で取り入って玉藻の前と呼ばれるようになり、権力を手に入れ平安の世を混沌に陥れます。

幼馴染の少年・千枝松は、偶然助けられた陰陽師にそのまま弟子入りします。陰陽師の技を身に着け、狐に乗っ取られて別人のようになってしまった藻と戦います。

玉藻の前の妖艶さ、容赦なく人を殺してしまう残忍さ、狡猾さなどが細かく描写されていて、これぞ怪奇小説という感じでした。

幼馴染の千枝松との、対立する立場でありながら恋心を抱いているところや、ラストの切なさは最後までハラハラしながら読めました。

もう50年以上も前の小説ですが、奇想天外な展開がまるで今の漫画やアニメにも通じるものがありました。映画化というよりアニメ化のほうが向いているような気がします。

扱っているものが魑魅魍魎の妖怪なので、堅苦しい文体ではありましたが、内容的にライトで最後まで楽しめました。